今回の映画はオーウェン・ウィルソン主演の2001年の映画「エネミー・ライン」です。
敵に撃墜された主人公が、敵地から追跡者に追われながら脱出を試みる戦争アクション映画です。
この記事では「エネミー・ライン」の感想から見どころ、そして作品をより深く楽しむための深堀解説・考察をしていきたいと思います。
物語の結末や基となった実際の事件、あのゲームのモデルになった話からジャージに込められた意味まで解説しています。
エネミー・ライン(2001年)
2001年製作/106分/アメリカ
原題:Behind Enemy Lines
配給:20世紀フォックス映画
あらすじ
ボスニア上空から敵地撮影をしていたクリス大尉は、攻撃を受けて不時着。その地でセルビア人民軍の凶悪犯罪を目撃し、その情報を持ち帰るため、救出ポイントに向かう。彼の上官、レイガード提督は、上層部の意向に逆らって、クリス大尉を救出しようとする。
エネミー・ライン : 作品情報 – 映画.com
スタッフ・キャスト
監督:ジョン・ムーア
原案:ジェームズ・トーマス
ジョン・トーマス
脚本:デビッド・ベロズ
ザック・ペン
出演:オーウェン・ウィルソン
ジーン・ハックマン
ガブリエル・マクト
ウラジミール・マシュコフ
エネミー・ライン レビュー
主演のオーウェン・ウィルソンといえばこのブログでも取り上げたウェスアンダーソン監督作品や「ズーランダーシリーズ」ジャッキ・チェンとの「シャンハイ・ヌーン」などコメディよりの映画に出ている印象がありますが、本作「エネミー・ライン」はハードなアクションとシリアスなウィルソンを堪能することができます。
孤独な兵士の描写が秀逸
撃墜されたパイロットが敵の捜索を潜り抜け脱出を試みるという物語なのですが、敵地で一人逃げ惑う兵士の姿が孤独で、雪が残る寒そうな山地も相まってとても痛々しさが伝わるのです。
とくに無線でのやり取りがよかったです。
まるでメタルギアシリーズのような緊張感で、クリスが諦めてしまわないように励ますなど無線だからこそのやり取りがこの映画の注目ポイントです。
オーウェン・ウィルソンの体を張った演技とアクション
オーウェン・ウィルソンは撮影前に海軍のサバイバル訓練を受けたそうで、かなり気合の入ったアクションを楽しむことができます。
また、映画前半で撃墜されてしまうスーパーホーネットが地対空ミサイルから逃げるシーンも素晴らしく、オープニングの空母のシーンから、
いまトップガン観ているのかな?と思うほど戦闘機映画でもあります。
戦闘機を観るだけでも十分楽しめる映画かもしれません。
総評
この映画、これが好きという方なら十分楽しめる映画です。
それは、
- オーウェン・ウィルソン好き
- GTA4(ニコ・ベリック)好き
- 戦闘機好き
- MGS好き
以上の要素が好きな方は絶対にハマるはずです。
ストーリーに捻りがあるわけではなく、見る人が見ればただ敵地から逃げる兵士の映画にしか見えませんが、
これらに興味がある方はぜひ鑑賞をおススメします。
エネミー・ライン 解説考察
ここからは作品をより深く知るための解説・考察をしていきます。
ネタバレ有になりますので未見の方は下のリンクから視聴後にお読みください。
物語の背景・要約
1992年から起きたユーゴスラビア(現セルビア・モンテネグロ)の民族紛争がシンシナティ協定により、停戦が合意されました。
主人公たちが属する米海軍はNATO軍が撤退を始める中、アドリア海上でパトロールする毎日で、主人公はそんな日々に嫌気がさし上官に退役願を出すのでした。
そしてクリスマスの休暇日にパトロールに繰り出された主人公たちは、ボスニアの非武装地帯で停戦合意に反して武装したセルビア人の集団を目撃し撮影します。
それに気づいたセルビア人武装勢力は地対空ミサイルで主人公たちが乗る18Fを打ち落とし、証拠隠滅のため撮影データの回収と主人公たちを抹殺するために追跡を始めるのでした。
シンシナ協定は架空の協定で、現実のデイトン合意がモデルとなっていると言われています。
物語のラスト結末はどうなった?その後は?

クリス大尉は撃墜されパラシュート脱出した際に見たマリア像がある崖にたどり着きます。
そこには現在位置を伝えるビーコンと戦争犯罪の証拠を押さえた撮影データ(ハードディスク)がありました。
ビーコンに気づいたレズリー司令官は軍の反対を押し切ってクリスを吸湿に向かいますが、ビーコンの発信は敵にも知られてしまいます。
敵勢力の戦車部隊と米海軍のヘリコプター部隊が鉢合わせし激しい戦闘が繰り広げられる中、
雪に隠れて追跡者を撃退したクリスは傷を負いながらもハードディスクを回収して脱出に成功するのでした。
その後クリスは退役願を取り下げました。
セルビア人司令官は戦争犯罪で有罪となり、
レズリー司令官は左遷されるも、勇退の道を選びました。
実話を元にしている
実はこの物語は実を元にしていると言われています。
1995年に米空軍の撃墜されたパイロットがスコット・F・オグレディ大尉が6日間救出されるまで逃げ延びたというエピソードから着想を得たと言われています。
そしてこの話には後日談があり、無許可で物語に使用されたとしてスコット大尉は制作会社である20世紀フォックスに訴訟を起こします。
最終的には和解することができたそうですが、自分は罵倒したり命令に背くようなことはしたことはないと主張していたそうです。
スーパーホーネット18F

クリス大尉たちが乗っていた戦闘機は「スーパーホーネット」と呼ばれるF/A-18E/Fで、アメリカ海軍が現行で採用する戦闘機です。
トップガンマーベリックで登場した戦闘機も18Fスーパーホーネットでした。
ちなみに1作目のトップガンで登場した戦闘機はF-14トムキャットです。
映画内でミサイルに追跡されるドキドキのシーンがありますが、実際にはあそこまで追跡する事は出来ないそうです。
ジャージ姿の追跡者サッシャの正体
青に白ラインのジャージ姿クリスを執拗に追跡する追跡者サッシャが印象的でした。
寡黙で狙撃の名手で演じたのはロシアの映画監督兼俳優のウラジーミル・マシュコフで人気スパイ映画の「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」にも出演しています。
なぜジャージなのか
東欧主にロシアの人たちといえばアディダスのジャージのイメージがありますが、なぜジャージなのでしょうか。
その歴史は、1980年のモスクワ五輪が始まりとされています。
冷戦の中厳しい経済状況が強いられていたソ連は自国開催のオリンピックに力を入れており、国力を世界中にアピールするためにも選手たちは立派なユニフォームを提供したいと考えていました。
そこに名乗りを上げたのが「アディダス」だったのです。
モスクワ五輪でメダル獲得総数の195個。1大会におけるメダル数の最多獲得という記録を打ち立てたこともあり、ロシアの人々にとってアディダスは憧れの存在となりました。国交が正常化し、アディダスの正規販売が開始され、より一般の人たちにも入手がしやすくなったことでさらにアディダスの人気が高まりました。
しかし、話はそれだけではありません。
当時西ドイツ(アメリカ統治)に本拠地を置くアディアスをユニフォームに採用するのはソ連にとって敵国アメリカに屈したことになるのではないかと批判の声が上がっていました。
そして、苦肉の策としてアディダスの象徴でもある3本ラインを2本ラインにしたという逸話があります。
そのため、追跡者サッシャが着ていた青ジャージは2本ラインで胸にはオリンピック大会をイメージした刺繍が施されていました。
サッシャの正体
これらの背景を考慮すると、サッシャは狙撃の元オリンピック選手なのではないでしょうか?
高い身体能力と狙撃の腕前そして、2本ラインの青ジャージから間違いないでしょう。
GTA4にニコベリックのモデル

オーウェン・ウィルソンを執拗に追いかけた追跡者のサシャはグランドセフトオート4の主人公ニコ・ベリックのモデルになりました。
顔から服装までそっくりですね。GTA4からこの映画を観た人も多いのではないでしょうか。
ちなみに監督のジョン・ムーアは同名ゲームが原作の「マックスペイン」も監督を務めています。
ゲーム「マックスペイン」はGTAのロックスター・ゲームスが販売するゲームです。
こんなところでも繋がるんですね。
サシャのスナイパーはSIG-Sauer SSG 3000
ジャージ姿がいかにもな追跡者サシャが使用したスナイパーはSIG-Sauer SSG 3000(シグザウエル)でした。
スイスのシグ社とドイツのザウエル社が開発したボルトアクション式狙撃銃で、警察でも採用されるほどメジャーなライフルです。
続編は北朝鮮が舞台
エネミー・ラインは続編が4作あります。
ですが物語としての繋がりはなく、俳優陣も違います。
3,4作目に関しては劇場公開されていないオリジナルビデオ作品になっています。
興味のある方はアマゾンプライムビデオで視聴可能です。
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