映画「リトル・ダンサー」レビュー解説考察 実話でモデルがいる?時代背景は?

今回の映画「リトル・ダンサー」はイギリスの田舎町でバレエダンサーを目指す少年のお話。
夢をあきらめない事や親子の絆、友情などを描いた感動の一本です。

この記事では「リトル・ダンサー」のレビューからより作品を楽しむための豆知識や当時のイギリス経済や時代背景などを元に作品を解説考察していきます。

リトル・ダンサー(2000年)

2000年製作/111分/イギリス
原題:Billy Elliot
配給:日本ヘラルド映画

あらすじ

イギリスの炭坑町に住む少年ビリーは、偶然目にしたバレエ教室に惹かれ、女の子たちに混じって練習するうち夢中になっていく。めきめき上達する彼に自分の夢を重ね、熱心に指導するウィルキンソン先生。しかし大事なお金をバレエに使うことを知った父は激怒し、教室通いを禁じる。先生はビリーにロイヤル・バレエ学校のオーディションを受けさせたい一心で無料の個人レッスンを行うが、オーディションの朝、炭鉱夫の兄トニーがスト中に逮捕される。

リトル・ダンサー : 作品情報 – 映画.com

スタッフ・キャスト

監督:スティーブン・ダルドリー
製作:グレッグ・ブレンマン
   ジョン・フィン
脚本:リー・ホール
撮影:ブライアン・テュファノ

出演:ジェイミー・ベル
   ジュリー・ウォルターズ
   ゲイリー・ルイス
   ジェイミー・ドラヴェン
   アダム・クーパー

リトル・ダンサー レビュー

初期衝動を体現したかのようにT-REXの「コズミック・ダンサー」で飛び跳ね踊る少年ビリーのカットから物語は始まります。

この映画はかつての繁栄を失った炭鉱の町が舞台。閉鎖的なこの町から一人の少年が夢をあきらめず、ダンサーとしての夢を叶えるために町を飛び出す物語で、夢をあきらめない事やその夢を尊重することの大切さ、そして、親子の絆が描かれています。

ボクシングを習わせ男らしく育てたい父親はビリーがバレエを習うことを止めようとしますが、徐々にビリーの本気が伝わり自立した本当の男としてのビリーに気づき何としてもロンドンのバレエスクールに入学させるために奔走する様はとても感動的でした。

時代の転換期で大きく揺れ動くイギリスの労働者階級に属する父親は息子を羽ばたかせるために生まれ変わります。

子供時代を思い出す

この物語はビリー自身の物語でありながら父親の物語でもあることが多くの人の共感と感動をもたらすのだと思います。

親に隠れながらバレーの練習をするビリーの姿はとても愛おしく、誰もが同じような経験や気分を味わったことがあるのではないでしょうか?

初恋や親友との時間など青春映画としてもとても面白いです。

授業のマラソンで近道し二人だけの秘密を共有する特別な関係を表現していているシーンは子供らしく純粋で川のせせらぎがキラキラと非常に美しく大好きなシーンです。

総評

サッチャー政権下を舞台にした映画は数多くあるが中でも特に傑作です。
夢を追う事の大切さや、親子愛、親友との友情などをテーマに描いているため、親子、カップルなど一緒に見る映画としてもおすすめです。

アナログレコード好きとしては、2曲目から聴くために針を慎重に落とすシーンに心打たれ、UKロック愛にあふれているところもこの作品の好きなところです。

リトルダンサーを深堀 解説考察

ここからは映画「リトルダンサー」を深く楽しむために作品を深堀していきます。

時代背景や使われた楽曲、モデルとなった人物など解説考察していきます。

モデルは実在のダンサー ウェイン・スリープ

画像引用元:Wayne Sleep – Wikipedia

本作は実話ではありませんが、モデルとなった実在の人物がいます。

それはウェイン・スリープという男性バレエダンサーです。

彼は幼少期イングランド北東部のハートリプールで過ごしバレエを学びます。

奨学金でロイヤルバレエ学校に入学しのちにシニアプリンシパルダンサー(最高位)の称号得ました。

バレエを学ぶ以前はタップダンスを習っており、映画内でビリーもタップダンスを踊っていました。

物語の舞台は1985年のサッチャー政権下

「ゆりかごから墓場まで」の社会保障制度で、無料で医療が受けられる国民保険や審査なしで給付金がもらえる失業保険など働かない方が豊かな生活が送れるほどで失業者は増え経済的にイギリスの国力が失われていった時代でした。

そんな中で登場したのが保守派で鉄の女と呼ばれたマーガレット・サッチャーでした。

将来性のない鉱山業など民営化し、社会保障も徹底的に見直すのでした。

国民が自ら自立した強い国を目指してたサッチャーは批判されることも多い政治家でしたが、

自ら人生を選び田舎から飛び出すビリーは自律的で、サッチャーの政治を肯定的に表現した映画でもあると言えます。

鉱山労働者のストライキの理由

炭鉱の閉鎖を阻止しようとする政府に対して行われたストライキです。

賃上げを要求するようなストライキではなかったのがポイントですね。

最終的にはサッチャー率いる保守党に鎮圧されストライキは収束しました。

結果、多くの炭鉱は閉鎖され一部は民営化されました。

映画の挿入歌は?

映画冒頭ビリーが兄のレコードで踊るシーンで流れる音楽は、イングランド出身のロックバンドT-REXの「コズミック・ダンサー」です。

日本でも「20th Century Boy」が有名ですよね。

映画内では他にT-REXの楽曲で「ゲット・イット・オン」、エンディングには「ライド・ア・ホワイト・スワン」も使われていましたね。

他にはクラッシュの「ロンドン・コーリング」が挿入されていました。

物語の時代背景にあった選曲と言えます。

いま紹介した楽曲をまとめたサントラが発売されています。

白鳥の湖のストーリー

悪魔に白鳥に姿を変えられてしまった女性オデットの話。

女性は夜の数時間だけ元の姿に戻ることができるのでした。

その呪いを解くには未婚の男性に愛を誓ってもらうことでした。

そして元の姿に戻ったオデットは湖で王子と出会い恋に落ちます。

ある日、王子は母親に舞踏会で結構相手を選ぶように命じられます。

本命である湖の女性と結婚したかった王子は、舞踏会でオデットに告白するのですが・・・

舞踏会にいたオデットは悪魔の娘オディールだったのです。

偽物に愛を誓ってしまったため呪いを解くことができなくなった二人は絶望し自決するのでした。

映画内でウィルキンソン先生はビリーに物語の結末を教えませんでした。

バレエを踊っている間だけ本当の自分になれるビリーはオデットのようです。

バレエダンサーとして成功できるかはビリー自身にかかっており「白鳥の湖」をハッピーエンドにできるように願いをこめて結末を教えなかったのです。

ラストのビリーはアダム・クーパー

成長しバレエダンサーとなったビリーを演じたのは、ロンドン出身のバレエダンサー、アダム・クーパーでした。

1995年には男性版「白鳥の湖」で主演を演じています。

監督のスティーブン・ダルドリー

画像引用元:スティーブン・ダルドリー – Wikipedia

監督のスティーブン・ダルドリーはバイセクシャルを公言しています。

ビリーの親友のマイケルは同性愛者で監督自身を描いているようにも思えますし、親に内緒でバレエを練習するビリーの心情の描き方などは、監督自身の幼少期の経験が生かされているのかもしれませんね。

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