今回は2022年大ヒット作の映画「RRR」です。
監督は「バーフバリシリーズ」のS.S.ラージャマウリ監督。
W主演はN・T・ラーマ、ラーム・チャランとインド映画界のトップ俳優たちで、インド映画内でも製作費ともに最大規模の一本となっています。
この記事では「RRR」のレビューから見どころ、作品をより深く楽しむための解説考察をしていきます。
RRR(2022年)
2022年製作/179分/G/インド
原題:RRR
配給:ツイン
あらすじ
1920年、英国植民地時代のインド。英国軍にさらわれた幼い少女を救うため立ち上がったビームと、大義のため英国政府の警察となったラーマ。それぞれに熱い思いを胸に秘めた2人は敵対する立場にあったが、互いの素性を知らずに、運命に導かれるように出会い、無二の親友となる。しかし、ある事件をきっかけに、2人は友情か使命かの選択を迫られることになる。
RRR : 作品情報 – 映画.com
スタッフ・キャスト
監督:S・S・ラージャマウリ
原案:V・ビジャエーンドラ・プラサード
脚本:S・S・ラージャマウリ
出演:N・T・ラーマ・ラオ・ジュニア
ラーム・チャラン
アジャイ・デーヴガン
アーリヤー・バット
シュリヤ・サラン
サムドラカニ
RRR レビュー
インド映画は長いという印象がありますが、本作もご多分に漏れず、3時間2分という超ボリュームの一作になっています。
アベンジャーズエンドゲームも3時間1分と長かったですが、RRRは1分長いという事で、心配なのはトイレ問題なのですが、そんな心配は無用でした
全編クライマックス
いろんなレビューで語られる事ですが、とにかく上映時間の長さを感じさせないつくりになっています。
始まりから終わりまで全速力で駆け抜け全編がクライマックスと言っていいほど見せ場の多さにスクリーンから目が離せません。
これは実際に見て実感してほしいの一言に尽きます。
怒涛のアクションシーンが続くのですが、スローモーションの使い方が秀逸で、戦闘が激化すればするほど状況が分かりずらくなりますが、所々スローモーションを挟むことで状況を把握しやすく、さらに爽快、興奮へとつながる構図は流石ラージャマウリといったところです。
ダンスシーンが素晴らしい
インド映画と言えばダンスシーンですが、
突然踊りだすから突飛すぎて倦厭してしまう方もいるみたいですが、RRRそのハードルも超えてきます。
ごく自然に、ストーリーの破綻なくダンスシーンに突入するあたりダンスシーンに違和感がありませんでした。
全編通すとダンスシーンは1回しかないのが逆に残念なのですがエンドロールで監督も交えて踊ってるのがインド映画らしく、スタッフロールは右端で流れスクリーン3分の1がダンスで潔く、
最後の最後までエンタテインメントに徹しているのに感服しました。
伏線回収が素晴らしい
長い上映時間の中で主人公二人のバックグラウンドが丁寧に描かれます。
この時伏線回収が素晴らしく練りに練られた脚本になっています。
だからこそこの伏線回収が映画中次々と登場するので飽きる暇もなく3時間が過ぎていくのです。
総評
ロングランで拡大上映されている現在(2023年2月)劇場で必ず観てほしい1作。
RRRはエンターテインメントから神話に昇華した奇跡の映画です。
ド直球のアクションは痛快かつ、練られたギミックの使い方も優秀でアクション監督のニック・パウエルの功績も大きいと思います。
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RRRを深堀解説
ここからは「RRR」をより深く楽しむための深堀、解説考察をしていきたいと思います。
ネタバレも含みますが、2度目を鑑賞する前にぜひ抑えておきたいポイントばかりです。
RRRのタイトルの意味
RRRとはRise、Roar、Revoltの略で意味は、
蜂起、咆哮、反乱となります。
言語によってはその略が変わります。
テルグ語、タミル語、カンナダ語、マラヤーラム語では、
怒り、戦争、血を意味する単語に置き換わっています。
ですが、これは後付けで、
企画の段階で、
ラージャマウリ(Rajamouli)、ラーム(Ram)、ラーマ(Rama)と
監督と主演二人の名前の頭文字をとってトリプルRと呼ばれていたことが由来です。
主人公二人のモデルは?
主人公のラーマ・ラージュとコムラム・ビームはどちらも実在の人物でインド独立運動の英雄です。
A・ラーマ・ラージュ
正式名アッルーリ・シータラーマ・ラージュ(1898年7月4日 – 1924年5月7日)は、イギリスの植民地支配に対して先住民を率いてゲリラ武装し武力で革命を試みた英雄です。
あ最後は特殊部隊に捕らえられ銃殺刑に処されてしまいます。
コムラム・ビーム
コムラム・ビーム(1900年 – 1940年)はゴンド族の革命家で、反乱軍を従えていた。
武装した警官に殺害されるが、彼は死後、ビームはゴンド文化の「ペン」として神格化されました。
映画内でラーマは警官になって武器を故郷に持ち帰り反乱を計画していました。
ビームは処刑されるシーンで武力ではなく、姿、言葉で民衆を動かしました。
実在の人物のエッセンスが反映されたキャラクター像とストーリーだったことが分かりますね。
ちなみにビーム役のN・T・ラーマは子役時代にラーマ王子を演じています。
映画のヒントはタランティーノ
主人公は実際に存在した人物ですが、現実には一緒に活動したことは無いそうです。
ですが、その2人がもし出会っていたらという想像からこの映画は生まれました。
歴史改変ものといえばタランティーノ監督の「イングロリアス・バスターズ」や「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」が思い浮かびますが、実際ラージャマウリ監督はこの映画たちからもインスピレーションを受けているとインタビューで語っています。
インド神話 ラーマ王子とビーマ
叙事詩「ラーマーヤナ」の主人公ラーマ王子と、「マハーバーラタ」のビーマが物語が土台になっています。
また、この叙事詩にはラーマの恋人シータなどモデルとなった人物が登場します。
インド神話を知ればさらに面白いのがRRRなのです。
ビームとラーマが肩車して戦うシーンがありますが、腕が4本あるシヴァ神のように見えました。
他にも様々なオマージュが隠されているそうです。
ぜひインド神話に精通した方の解説ありで鑑賞したいですね。
エンディングの偉人たち
エンドロールに登場した人物は全員インドの伝説的な指導者たちです。
人物の名前だけ列挙していきます。
①スバース・チャンドラ・ホース
②ヴァッラブーバイー・パテール
③キットゥール王妃チェンナンマ
④V.O.チダンバラム・ピッライ
⑤バガト・シン
⑥タングトゥーリ・プラカーシャム
⑦ケーララ・ヴァルマ・パラッシ・ラージャー
⑧シヴァージー
スバースは日本に関わりがある人物で、第二次世界大戦で日本軍ともインパール作戦で共闘していました。
南インド映画と北インド映画
インド映画というとボリウッドを想像しますが、本作「RRR」はボリウッド映画ではありません。
「RRR」はテルグ語圏内で制作されたトリウッド映画(南インド映画)になります。
対して、ボリウッド(北インド)はヒンディー語圏内で制作される映画で主な作品に「きっとうまくいく」などがあります。
インド映画9つの要素
インド映画には必ずと言っていいほど9つの要素が盛り込まれます。
インドの伝統的な舞台劇で表現される「9つの感情」に倣って、映画でもこの9つの感情を取り入れているからで、
これらの要素が盛り込まれています。
RRRでもこれらの要素すべて盛り込まれていましたね。
これらすべて踏襲するからインド映画は長いのだと言えます。
続編はあるのか?RRR2
公開前のインタビューでラージャマウリ監督は続編の可能性を否定していましたが、主要スタッフは続編の制作を望んでいるそうです。
ここまでのヒットを飛ばした作品なので続編が作られる可能性は非常に高いと言えます。
いずれにせよラージャマウリ監督の次回作が待ち遠しいですね。
コメント
”ビームは処刑されるシーンで「結果より行為に意味がある」と断言し武力ではなく、姿、言葉で民衆を動かしました。”
こちらの部分が、ラーマとビームのエピソードを合体させてしまったように見受けられます。
”ビームは処刑されるシーンで、武力ではなく、姿、言葉で民衆を動かしました。”であれば正しいと思います。
”「結果より行為に意味がある」と断言し”たのはラーマですね。
ビームが言った、という表現は語弊だと思いました。
ビームの姿を見てラーマがそう受け取り、”「結果より行為に意味がある」と断言し”たという流れが重要だと思いましたので、コメントしました。
ゆりり様
当ブログを閲覧いただきありがとうございます。
ご指摘ありがとうございます。本文も修正させていただきました。
RRRの円盤か配信開始されましたらもう一度見直そうと思います。
コメントしました、ゆりりです。
早速の調整、ありがとうございました!
あまり厳密に言うとネタバレとも取られかねませんが、
ビームの歌、あの姿が、ビームの歌の言葉がわからないあの場の民衆にも届き、彼らを突き動かした、というシーンだと思います。
そんな中にあって、ラーマにはそれがどう響いたでしょうか…というところだと思います!
とても熱いシーンなので、ぜひ劇場で、目の当たりにしてほしいなと思います!
長々と失礼しました。
わかりやすい紹介記事、ありがとうございました。