今回は東出昌大主演の映画「Winny」です。
2004年から無罪を勝ち取る2014年までの戦いを描いた実話です。
この記事では本作をネタバレありでレビューし、これから見る人のために前知識として知っておきたい情報もまとめました。
ネタバレありと言いましても実話で結果が出ているストーリーなので言ってもネタバレにはならないですし、プロの役者陣の最高の演技で体感、感動してほしい一作となっております。
Winny(2023年)
2023年製作/127分/G/日本
配給:KDDI、ナカチカ
あらすじ
2002年、データのやりとりが簡単にできるファイル共有ソフト「Winny」を開発した金子勇は、その試用版をインターネットの巨大掲示板「2ちゃんねる」に公開する。公開後、瞬く間にシェアを伸ばすが、その裏では大量の映画やゲーム、音楽などが違法アップロードされ、次第に社会問題へ発展していく。違法コピーした者たちが逮捕される中、開発者の金子も著作権法違反ほう助の容疑で2004年に逮捕されてしまう。金子の弁護を引き受けることとなった弁護士・壇俊光は、金子と共に警察の逮捕の不当性を裁判で主張するが、第一審では有罪判決を下されてしまい……。
Winny : 作品情報 – 映画.com
スタッフ・キャスト
監督:松本優作
脚本:松本優作
岸建太朗
製作:伊藤主税
藤井宏二
金山
出演:東出昌大
三浦貴大
皆川猿時
和田正人
木竜麻生
池田大
金子大地
阿部進之介
渋川清彦
吹越満
Winny レビュー考察
Winnyについての当時高校生だった筆者印象は、「電車男」や「秋葉原」といったオタク文化が一般化し始めた中で起きた事件の一つにしかすぎず、
当時としても2ちゃんねるなどの界隈では不当逮捕である論調が強かったと思いますが、2000年初頭はまだまだテレビなどの既存のメディアが強かったため、「Winny」はパソコンに強い人じゃないと扱えないなという印象を持っていました。
そして昨今ビットコインの登場やyoutube、NETFLIXなどの動画配信サービスなど海外のサービスが台頭する中、20年前に先進的なソフトをこの日本で開発した天才プログラマーでWinnyの開発者でもある金子勇氏にスポットライトが当たるのは必然的な事だとも思うのです。
東出昌大はじめとする役者陣が素晴らしい
まずこの映画を評する上で述べたいのは、東出昌大をはじめとする役者陣の演技が素晴らしいという事です。
金子氏になりきる為に18キロ増量したという東出昌大は金子氏が憑依しているといっていいほどの存在感でした。
金子氏を弁護する檀弁護士演じる三浦貴大の人間味ある触れる感じや、敏腕弁護士の秋田弁護士を演じる吹越満や渡辺いっけいなど法廷さながらの演技バトルがとてもエンタメとして楽しめました。
堅苦しく、専門用語が多い題材にも関わらず見やすい映画になっているのでITに疎い方でもわかりやすい造りになっています。
実際にITに疎い年配の裁判官にもわかりやすくWinnyというものを知ってもらうよう分かりやすく答弁するという実際のエピソードなどを盛り込むことで全くWinnyを知らない人でも理解できるようになっていますし、それを役者陣の演技で上手くまとめ上げているのです。
まずは観てほしい
この映画の感想としては、ぜひいろんな方に観てほしいという事。
日本にこのような技術者がいたという事。
このような事件があったという事。
ぜひ映画を鑑賞して何かを感じ取ってほしいと思うのです。
この映画はあくまで実話を元に作られており、誰が悪くて何が正しいのかまでは描かれておらず、ただ裁判での判決が答えになっています。
そして自分はこの映画はこれからの日本の為に作られた映画だったのではないかと思ったのです。
創造するという事
何か新しいモノを創造するという事はとても素晴らしい事ですが、恐怖でもあります。それは既得権益が脅かされるからかもしれないですし、単に知らない物は怖いというだけかもしれません。
ですが、何かを創造するという事はこれらのハードルを乗り越えていかなければいけません。
日本の技術者がこれから新しいソフトやサービスを創造するときに委縮してしまう社会にならないために金子氏や檀弁護士は戦っていたのです。
スタッフロール中に金子氏の実際の映像が流れるのですが、ラスト未来の技術者に向けたメッセージにはジーンと来てしまいました。
仙波敏郎という存在
Winny事件と並行して描かれるのが愛媛県警の裏金問題を内部告発した仙波敏郎氏の物語です。
こちらも実際にあった事件で、現職警官からの内部告発ということもあり仙波氏も権力に圧力を受けながら戦ったということ、そして、Winnyによって裏金の証拠となる偽造領収書がリークされたという事で繋がり、映画としての広がりを与える重要なエピソードとなっています。
ですが注目すべき点はこの仙波敏郎氏という存在そのものにあると思います。
権力に立ち向かうという点で金子氏や弁護団と同じ立場の人間なのです。
裏金造りに加担しない仙波氏は優秀ながらも出世することはできず、交番勤務を続ける中で若い警官になぜやめないのかと問われた際に
「やめるのは簡単だ」と一蹴します。
この一言がこの映画の本質をついていると思うのです。
日本の技術者の未来の為、腐敗した警察組織を立て直す為人生をかけた二人の人物は「被疑者」と「警官」という対立する立場ながら心情は一致していたと考えられます。
検察はなぜ金子氏を逮捕したのか
このことについて映画の中では明かされることはありませんでしたし、以前のABEMAの番組に出演した檀弁護士もわからないと答えていました。
純粋に著作権侵害を食い止めるために行ったのか?Winnyというソフトが検察にとって厄介な存在だったのか?メンツの為なのか?
映画ではあくまで実話で実際に行われた裁判を忠実に再現していると言われています。
検察の目的よりも何が正しいのか中立な目線で判断しなければいけないという事を描きたかったのだと思います。
総評 評判も上々まずは観て
飛行機が好きだったという金子氏のエピソードから青い大空に飛んでいく飛行機のシーンはとても明るく綺麗なシーンなのですが、警察の取調室、検察庁、仙波の交番などのシーンはとても暗く対照的に描かれていました。
それは日本の闇の部分を象徴的に表現しており、そういった映画的表現も良かったですね。
役者陣の自然でかつリアルな法廷シーンは必見です。
日本にこのような素晴らしい人物がいたということ。そして金子氏が残したものを知るためにも多くの人に見てほしいと思った一作でした。
Winny 解説
ここからはWinnyにまつわる事柄を分かりやすく解説していきます。
Winny(ウィニー)とは
Winny(ウィニー)とは金子勇によって開発されたファイル共有ソフトで、2002年に初版が2ちゃんねるに公開されました。
P2P技術(Peer to Peerピア・ツー・ピア)という技術が使われており、低コストで耐障害性に優れたネットワーク方式ですが大規模なネットワーク通信には不向きとされていました。
ですが、それを克服し大規模ネットワークの運用が可能となったWinnyで当時革新的でした。
P2Pを使ったサービス
現在でもネットワーク通信としてメジャーなP2Pは自分たちにもお馴染みのサービスで使用されています。
・Spotify
・youtube live
・LINE
・Skype
・スプラトゥーン
・スマブラ
・ビットコイン
このように毎日使うサービスでこのP2P通信技術が使われています。
もしこの裁判が無ければどれだけ日本のIT技術が発展していたのでしょうか。
日本のITを10年遅らせたと言われるのは今現在もメジャーな技術だという事です。
金子勇とはどんな人物だったのか
1970年栃木県出身でWinny開発時は東京大学大学院情報理工学系研究科特任助手でした。
小学生のころからプログラミングが好きで研究者として活躍していた時もフライトシミュレーションの「Nekoflight」やリアルな物理演算を用いた「NekoFight」などのフリーゲームを発表していました。
とても純粋で口下手だった彼はプログラミングを通して表現しようとしていました。
2011年12月の無罪確定から2年後の2013年7月6日に急性心筋梗塞で42歳の若さで死去しました。
47氏とは
47氏とは金子勇が2ちゃんねるで使用していたハンドルネーム(コテハン)です。
47番目のレスに開発の宣言を投稿したことから「47」と名乗り、周りからは「47氏」と呼ばれて言いました。
Winny裁判で2ちゃんねる(主にダウンロード板)の住民たちは金子氏たちの強い味方で、裁判費用などの為の基金を設置すると有志から最終的に1600万円以上の支援金が集まりました。
検察とは
物語の敵役ともいえる検察は一体どいった組織なのでしょうか?
検察とは逮捕・起訴し裁判をかけるとこができる機関です。
警察は被疑者を逮捕することしかできず、被疑者を裁判にかけるかどうか判断するのは検察官の役目になっています。
原作は檀俊光の「Winny天才プログラマー金子勇との7年半」
原作は弁護士の檀俊光(ダントシミツ)氏が書いた「Winny天才プログラマー金子勇との7年半」が元になっています。
より詳細に金子勇氏がどんな人物だったのかを知ることができ非常に面白いですし、
檀弁護士のブログが元になっているので、当時の裁判の様子や失敗談など軽快な文章で赤裸々に述べられておりとても興味深い内容でもあります。
当時のネット界隈(主に2ちゃんねる)を感じ取れるような文章で、当時のネットを知っている人は懐かしく感じるでしょう。
Amazonkindleアンリミテッドで読むことができるので興味がある方はあわせてお読みください。
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